スピーカーの位置を調整する

スピーカーの位置調整。
左右のスピーカーの位置関係を揃える事でステレオイメージを正確に再現し三次元的な空間の
広がりとニュアンス豊かなリアリティーの高い質感を得ようというものである。

しかし、単に左右のスピーカー位置を合わせるだけでは完璧とはいえず、まずスピーカーと部屋の関係を考える必要がある。
我々が普段聴いているの音楽はスピーカーから出た音と部屋の反響音が作り出すイメージであり、これらの音の相関関係がずれているとどこか不自然さを感じる音になる。

では、まず最初にスピーカーと部屋の位置関係を合わせてみる事にする。

右の画像は右側のスピーカーであるが、まずこの右スピーカーの
位置を動かし、部屋との関係を探ってみる事にする。(写真1)
(左スピーカーでも同じ)

位置決めには出来れば残響成分が多く、録音状態も良いソフトなら
調整がやりやすい。

今回は試聴ソフトの定番の一つカンターテドミノを使用した。
(写真2)
*PROPRIUS PRSACD7762(CD,SACDハイブリッド盤)
CDトラックを使用

再生はトラック1のCANTATE DOMINO

スピーカーを前後左右と色々動かしてそれぞれの位置で部屋の
響きを聴く。

再生音量は出来れば大きめの方がわかりやすい。

聴き方は通常何気なくスピーカーを置いている状態だと
スピーカーの位置から音が聴こえてくるが、一方のスピーカーを
鳴らしている時、もう一方のスピーカーの傍やスピーカーから離れた位置
に立っているとその空間(自分自身のまわりと言うとわかりやすいかな?)
には音がない様に聴こえる。

スピーカーの位置を色々と動かしていくと何処かに反対側の
スピーカー脇に立っていてもまわりの空間に音がある様に聴こえる
位置が見つかる。
(部屋によって聴こえ方の度合いには差があります。)

この状態で通常の試聴位置に戻って聴いてみると片側の
スピーカーしか鳴っていないのに両方のスピーカーが鳴っている
様に感じられると(少し大袈裟な表現ですが)部屋との相関関係は
良好と考えて良いでしょう。

写真1

写真2

写真3

調整後、右スピーカーは写真3の様な位置となった。
これは試聴位置から見るとかなり内振りとなり、音軸は試聴者の頭よりかなり前方を
横切っている。

見た目的には気になるが確かにこの位置での音の広がりは今までとは違う。
好感触を得たのでこのままこの右スピーカーの位置を基準に左側のスピーカー位置を
調整していく事にする。

さて、ここからは調整をスムーズに行うためAIRBOW レーザーセッターを使用する事にする。

写真7はAIRBOW レーザーセッター。写真8と9はそれぞれ組み立てたレーザーセッターを
正面と側面からみた画像である。

写真8

写真9

位置の決まった右スピーカーの背後の壁と横の壁からの距離を測り
左側のスピーカーも同様の位置にセットする。

右スピーカーの背面壁からの距離

写真4

右スピーカーの側面壁からの距離

写真5

左スピーカー

写真6

左の写真6は壁からの距離を右スピーカーと
同じにした左スピーカーである。

写真10

写真11

レーザーセッターは写真10の様な位置に三脚(カメラ、ムービー用)を立てて設置する。

そして最初に最適と思われる位置出しを行った右スピーカーの正面付近へ
左右のスピーカー中心軸からずれない様にレーザーセッターを前後に移動する。

この時レザーセッターのレーザーポインターの発光部が左右のスピーカーの中心軸上に
くる様にする。

ここまでの調整に約2時間強を費やした。
なかちゃんの体重より重い70kgを超えるスピーカーを
動かすのは大変な肉体労働だった。
スピーカーを押すとなかちゃんが移動してしまう事が
しばしばだった。

30〜40kg程度のスピーカーならいい位置を見つけるのに
30分もかからないだろうか。

あーしんど。(汗だくのなかちゃんはここで一息つくのだった。)

次に付属の鏡と透明の丸い粘着シートを使ってスピーカーの
垂直面に写真13の様に鏡を貼り付ける。

写真12

写真13

鏡を貼り付けたらレーザーポインターを発光させスピーカーに貼った鏡に反射させて
反射光がレーザーセッターの的の中心に帰ってくる様にする。
理想はど真ん中だが、上下方向への若干ずれ程度なら無視してもそれ程影響はないようだ。

これで右スピーカーはレーザーセッターに対して真正面に向いた事になる。
この状態で今度はレーザーセッターに取り付けた糸を使ってスピーカーまでの距離を調べる。

写真14

糸を持ちスピーカーに貼った鏡のレーザー光が当たって
いるところに糸を持っていき
その位置に印を付ける。

写真15

印を付けるのにはTAMIYAから発売されているマスキングテープを2つ折にして利用した。
(写真15:実際には糸は手で持っているのだが、ここではわかりやすい様にセロテープで仮止めしています。)
全体は写真14の様になります。

ここまでで右スピーカーがレーザー発光部に対して正面向きとなり、発光部からの距離が
わかりました。

今度は左スピーカーがレーザーセッターに対して右スピーカーと対称の位置となるよう
調整を行います。

考え方は右スピーカーの時と同じですが、今度はレーザーセッターではなく左スピーカーを
動かして調整します。

三脚の雲台を水平に左スピーカーの方を向く様に回転させ、三脚が動かない様に左スピーカー
の鏡に反射したレーザー光がレーザーセッターの的の中心に帰ってくる様に左スピーカーの向きとレーザーセッターの向きを両方動かしながら調整します。

向きの調整が終ったら、先ほど右スピーカーとの距離をを測って印を付けておいた糸で
右の時と同様に左スピーカーとの距離を合わせます。
今度は糸に付けた印はそのままに左スピーカーを前後に動かしながら右スピーカーと
同じ距離になる様にします。

必ずしも中心軸上でなくても構いませんが、調整後スピーカー位置が視覚的に
いびつに見えます。

これでレーザーセッターによる調整は一通り終了です。
この時点で再生音は今まで一体何を聴いていたんだろうと思えるほど、調整前とはまるで別物の様相を呈しています。

各楽器はそれぞれが明瞭に密度感も高く質感が増し、何よりも全てのハーモニーが
融合し一つの音楽となって歌い始めます。

また、帯域別に見ると意外に思うかもしれませんが、一番変化を感じたのが低域の定位感と量感で、これが見事に再現され音楽の土台が安定して聴こえます。
勿論中域、高域の質感も別物に感じます。

ステレオ再生に於ける左右のスピーカーの位置関係、すなわち位相の問題がどれ程重要かを改めて思い知らされます。

今まで自分自身の聴覚だけを頼りにスピーカーセッティングを行ってきましたが
このレーザーセッターなる小道具を使用する事で飛躍的に調整時間が短縮され
且つ調整後の音質も更に精度が増す結果となりました。

なんだかレーザーセッターの使い方講座みたいになってしまいましたが、
非常に有用なアクセサリーである事が確認出来ました。

次回も面白いアクセサリーを見つけ、色々と実験し音質向上を図りたいと思います。

しかし、ここで問題発生。

すごく音は良い! しか〜し、この違和感は一体何なのだ!

・・・・・驚かせてスイマセン

原因はわかっていたのです。

通常のダイレクトラジエータータイプ(コーン型やドーム型)の様な指向性の比較的
穏やかなスピーカーをお使いの方ならここで満足のいく音質が得られた事でしょう。
そうです、あなた方のシステムはそれはもう素晴らしい音楽を再生しているに
違いありません。

問題があるのはなかちゃんと同様、ホーンスピーカーなどの指向性のとっても強い
スピーカーをお使いの方達なのです。

次回、指向性の強いスピーカーでは一体何が起こるのか。

乞うご期待!!

調整完了!

写真16

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